福井弁護士会
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会長声明
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会長 川村 一司
2017年08月31日
死刑制度の廃止を含む刑罰制度の見直しに着手しないまま死刑執行を続けることについて抗議する会長声明
2017年08月18日
いわゆる共謀罪法の制定・施行に抗議する会長声明?自由に考え,議論し,意見表明を行い続けられる社会のために?
2017年08月08日
地方消費者行政の一層の強化を求める会長声明
会長 海 道 宏 実
2017年03月23日
いわゆる「共謀罪法案」の成立に反対する会長声明ー皆さんもいつの間にか捜査や処罰の対象になる世の中に!それでよいのでしょうか?
2016年12月22日
政府に労働時間規制強化により長時間労働を早急に是正することを求める会長声明
2016年11月25日
いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明―市民の自由が脅かされ,いつの間にか処罰されてしまう世の中にしないために
2016年11月25日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止に向けた検討をすべきであることを求める会長声明―犯罪被害者遺族支援とともに刑罰制度の見直しを2016年11月25日
憲法に緊急事態条項を創設することに反対する会長声明―災害対策を口実にするな
2016年04月22日
死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を求める会長声明
2016年04月20日
安全保障関連法の施行に強く抗議するとともにその廃止を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/2
会長 寺田 直樹
2016年03月23日
大津地裁による高浜原発運転差止・仮処分決定に対する会長声明
2016年01月21日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2016年01月20日
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
2015年12月28日
高浜原発3,4号機及び大飯原発3,4号機差止仮処分福井地裁決定に対する会長声明
2015年09月28日
安全保障法制改定法案の成立に抗議する会長声明
2015年07月24日
少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明
2015年07月23日
安全保障関連法案の衆議院強行採決に抗議し,同法案の撤回・廃案を強く求める会長声明
2015年07月01日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2015年05月25日
安全保障法制改定法案に反対する会長声明
2015年04月30日
放送の自由の確保を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/3
2015年04月14日
高浜原発3,4号機差止仮処分福井地裁決定に対する会長声明
2015年04月06日
労働時間規制を緩和する「労働基準法等の一部を改正する法律案」の閣議決定に反対する会長声明
会長 内 上 和 博
2015年03月27日
中池見湿地のラムサール条約登録範囲に悪影響を与えないよう北陸新幹線ルートの再検討を求める会長声明
2015年01月29日
商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明
2015年01月19日
内閣府消費者委員会の消費者庁移管について慎重な審議を 求める会長声明
2014年12月18日
福井事件再審請求最高裁決定に対する会長声明
2014年12月01日
秘密保護法の施行に反対し同法の改廃を求める会長声明
2014年09月30日
死刑執行に抗議する会長声明
2014年07月04日
集団的自衛権行使容認の閣議決定に強く抗議する会長声明
2014年05月21日
大飯原発3,4号機差止訴訟福井地裁判決に対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/4
2014年04月30日
商品先物取引法下における不招請勧誘禁止緩和に反対する会長声明
2014年04月30日
集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
2014年04月30日
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する 法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
会長 島 田 広
2014年03月14日
過労死等防止基本法の成立を求める会長声明
2013年12月18日
商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明
2013年12月18日
死刑執行に関する会長声明
2013年12月18日
秘密保護法の採決強行に抗議し,同法の改廃を求める会長声明
2013年12月11日
行政書士法改正に反対する会長声明
2013年12月04日
衆議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明
2013年11月29日
生活保護法改正案の廃案と国民の生活保護受給権の実効的保障を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/5
2013年11月27日
特定秘密保護法案の国際原則に照らした徹底審議と廃案を求める会長声明
2013年11月27日
通信傍受の安易な拡大と会話傍受の導入に反対する会長声明
2013年11月05日
国民の知る権利を侵害する特定秘密保護法案の廃案を求める会長声明
2013年10月31日
憲法第96条の発議要件緩和に反対する会長声明
2013年10月31日
福島第一原発事故に関し,損害賠償請求権を実質化するための立法措置及び,健康被害を未然に防ぐための措置を求める会長声明
2013年09月30日
死刑執行に関する会長声明
2013年08月01日
個人保証の原則的な廃止等を求める会長声明
2013年06月12日
「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
会 長 和 田 晋 一
2013年03月06日
「福井女子中学生殺人事件」再審棄却決定に関する会長声明
2012年07月25日
秘密保全法制定に反対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/6
2012年07月18日
大飯原発の再稼働が行われたことに抗議するとともに,停止中の原発につき再稼働しないことを求める会長声明
2012年07月02日
貸金業法完全施行2周年を迎えての会長声明
会長 安 藤 健
2011年12月22日
福井県警察警察官による逮捕状請求書偽造行為に対する会長声明
2011年11月30日
「福井女子中学生殺人事件」再審開始決定に関する福井弁護士会会長声明
2011年04月28日
「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明
会長 井 上 毅
2011年03月24日
提携リース契約を規制する法律の制定を求める会長声明
2010年11月25日
秋田弁護士会所属会員の殺害事件に対する会長声明
2010年06月25日
司法修習生に対する給費制の存続を求める会長声明
2010年05月31日
全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
会 長 黛 千 恵 子
2010年03月29日
家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/7
2010年01月29日
取調べの可視化(全過程の録画)の早期実現を求める会長声明
2009年12月24日
葛飾ビラ配布事件最高裁判決に関する会長声明
2009年10月30日
改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明
2009年08月27日
消費者庁長官及び消費者委員会委員の選任手続に関し 両組織創設の趣旨の徹底を求める会長声明
2009年07月27日
生活保護「母子加算」制度の法定を求める会長声明
会長 朝 日 宏 明
2009年03月11日
取調べの可視化(全過程の録音・録画)の実現を求める会長声明
2008年09月17日
死刑執行に関する会長声明
2008年06月11日
死刑執行に関する会長声明
2008年05月30日
「犯罪被害者等による少年審判の傍聴」を内容とする少年法改正法案に対する会長声明
会長 北 川 稔
2008年02月13日
死刑執行に関する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/8
2007年04月27日
「憲法改正国民投票法案」の慎重審議を求める声明
会長 山川 均
2006年11月30日
教育基本法改正法案に反対する再度の会長声明
2006年06月02日
教育基本法改正法案に反対する会長声明
2006年04月28日
「弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)」に反対する会長声明
2006年04月25日
共謀罪新設に反対する会長声明
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意見書
会 長 島 田 広
2013年09月17日
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書
会 長 和 田 晋 一
2012年07月25日
公契約法・公契約条例の制定を求める意見書
会 長 安 藤 健
2011年09月09日
地方消費者行政の充実強化に対する国の支援のあり方に関する意見書
会 長 北 川 稔
2007年10月03日
割賦販売法改正についての意見書
会 長 山 川 均
2006年11月14日
割賦販売法の抜本的改正を求める意見書
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決議
会 長 和 田 晋 一
2012年11月29日
生活保護基準の引き下げに強く反対する総会決議
会長 安藤 健
2012年02月22日
全面的国選付添人制度の実現を求める総会決議
会長 井上 毅
2010年12月27日
各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
―――――•―――――•―――――
放送の自由の確保を求める会長声明
1 自由民主党情報通信戦略調査会は,2015年4月17日,日本放送協会(NHK)の報道番組におけるやらせ報道問題及びテレビ朝日の報道番組においてコメンテーターが「官邸からバッシングを受けてきた」旨発言した問題について,両放送事業者の幹部を呼んで事情聴取を行った。同調査会(旧電気通信調査会)は同党の放送・通信分野の政策を担当する部局であり,報道によれば,同調査会の川崎二郎会長は,調査終了後,記者団に対して,放送倫理・番組向上機構(BPO)によるチェックが不充分なら,新たな第三者機関を設ける制度改正を行う可能性があることを示唆する発言をしたとされている。
政府と密接な関係にあり,今後の政府の放送政策に重大な影響を与える与党の調査会が,個々の番組の内容に関して放送事業者の幹部を呼んで事情聴取をすることは,放送事業者に対する事実上の圧力にほかならず,憲法及び放送法に照らしてきわめて不当な行為であると言わざるを得ない。
2 いうまでもなく,放送事業者には放送の自由がある。放送の自由は,日本国憲法第21条によって保障されており,国民の知る権利に奉仕するものとして民主主義の健全な機能を確保する上でもっとも重要な基盤となる憲法上の基本的人権である。
放送法は,第二次世界大戦中に放送が政府や軍部のプロパガンダの道具とされた歴史に対する真摯な反省にたちつつ1,かかる憲法上の重要な意義を有する放送の自由を確保すべく,その目的において「放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を確保すること」(第1条第2号)を掲げ,さらに「放送番組は,法律に定める権限に基づく場合でなければ,何人からも干渉され,又は規律されることがない。」(第3条)と規定し,番組編集の自由を保障している。番組内容に誤り等がある場合にも,放送事業者の「自律」を尊重しつつ是正が図られるよう,放送事業者自身に調査・訂正等の義務を課すほか(第9条),放送番組審議機関の制度を設けており(第6条,第7条),放送番組が外部からの圧力によってゆがめられることのないよう,慎重に配慮している。
3 こうした放送の自由の重要な意義及びこれを確保するための放送法の諸規定の趣旨に鑑みれば,政府が個々の放送番組の内容に干渉することが許されないのはもとより2,政党が政策調査を行う際にも,個々の番組内容に対する干渉にわたらないようにすべき制約があるといえる(なお政党が,事実と異なる報道により権利を害された場合には,放送法第9条に基づき訂正放送の請求をすればよいのであって,放送事業者の関係者から事情聴取を行う必要はない。)。
4 今回の自由民主党による事情聴取は,こうした制約を全く無視し,個々の番組の内容を狙い撃ちにして調査を行うものであり,放送番組の内容への干渉に外ならず,きわめて不当である。特に,政府と密接な関係を有する与党によってかかる干渉がなされることは,放送事業者の放送の自由を著しく脅かす行為といえる。
当会は,基本的人権の尊重と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として,民主主義の根幹をなす国民の知る権利と放送事業者の放送の自由を脅かすこうした行為を,看過することはできない。
5 よって,当会は,自由民主党はもとより,他の政党に対しても,個々の番組内容を狙い撃ちにした調査等,放送事業者の放送の自由を脅かす行為を行わないよう求め,放送事業者に対しては,そうした圧力に屈することなく自らの放送の自由を守ることを求める。
1 同法制定時の衆議院本会議において,当時衆議院電気通信委員会委員長であった辻寛一は,第3条に関する説明の中で,次のように述べて,放送の自由の重要性を強調している。「放送は,それが強力な宣伝の具であるがゆえに,一層表現の自由を確保されなければなりません。かつてわが国において,軍閥,官僚が放送をその手中に握って国民に対する虚妄なる宣伝の手段に使ったやり方は、将来断じてこれを再演せしむべきではありません。」
2 なお,放送法第3条の2のいわゆる番組編成準則については,かつては政府もこれを「精神的規定」と説明し,その実施は放送事業者の自律に待つべきものと説明していた。1993年9月のいわゆる椿発言問題以来,同条を理由とする放送内容に関する行政指導が繰り返されているが,この行政実務のあり方自体,憲法学説上,違憲の疑いが強いとして批判されている。
2015年(平成27年)4月30日
福井弁護士会 長 寺 田 直 樹
死刑制度の廃止を含む刑罰制度の見直しに着手しないまま死刑執行を続けることについて抗議する会長声明
2017年(平成29年)7月13日,2名に対し,大阪拘置所および広島拘置所においてそれぞれ死刑が執行された。金田勝年法務大臣による2度目の執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは11回目で,合わせて19名になる。
死刑制度は,死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること,EUを中心とする世界の約7割の国々が死刑を廃止又は停止していること,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないこと,などの様々な問題を内包していることは,2016年(平成28年)11月25日付け当会会長声明などにおいて繰り返し指摘してきたとおりである。そして,日本弁護士連合会は,2016年(平成28年)10月7日,我が福井県で開催された第59回人権擁護大会において,これまでよりさらに踏み込んで,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。その宣言においては,犯罪被害者・遺族に対する十分な配慮と支援が不可欠であるとしつつも,他方で,生まれながらの犯罪者はおらず,犯罪者となってしまった人の多くは家庭,経済,教育,地域等における様々な環境や差別が一因となって犯罪に至っているという実態があることを踏まえると,人権を尊重する民主主義社会であろうとする我々の社会においては,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体を見直す必要があるとして,直ちに公の議論を始めるよう求めている。
当会においても,2013年(平成25年)7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催し,また,2015年度(平成27年度)に設置された中部弁護士会連合会内の死刑問題検討ワーキンググループにおいても,昨年度は死刑廃止を考えるシンポジウムを富山,愛知,石川の各地で合計3回開催するなど,福井のみならず中部地方の各弁護士会を挙げて,より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを進めてきている。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開が十分になされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑の執行が繰り返されていることは,到底容認できない。当会は,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の見直しに着手しないまま行われた今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑制度についてのさらなる全社会的議論を呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月31日
福井弁護士会 会長 川村 一司
いわゆる共謀罪法の制定・施行に抗議する会長声明?自由に考え,議論し,意見表明を行い続けられる社会のために?
去る2017年(平成29年)6月15日,共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)が国会で可決・成立し,同法は同年7月11日に施行された。
同法案に対しては,国内外からさまざまな問題点が指摘され,当会も複数回にわたり反対の見解を表明した(2016年(平成28年)11月25日付け及び2017年(平成29年)3月22日付け当会会長声明)。国連プライバシーに関する権利の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も,首相宛書簡の中で「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との強い懸念を表明した。
また,様々な指摘にもかかわらず,同法案の本質的問題は修正されなかった。準備行為に着手した時点で処罰するとされるが,その「準備行為」の内容は依然として曖昧であり,実質的には共謀内容に着目することになる。このように,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,既遂処罰を原則とし,その前段階の未遂や予備等は例外的に処罰する刑法の基本原則を否定するという問題は解消されなかった。依然としてテロと無関係な犯罪まで多数が処罰対象となっており,また,処罰対象となる「組織的犯罪集団」の要件も曖昧であった。政府は,こうした問題点の指摘に対し,国会でも変遷し不明確さの残る答弁しかできず,国連の特別報告者からの質問にも,実質的に回答することはなかった。277もの多数の罪を対象とし,国民の基本的人権に重大な影響を与える法案にもかかわらず,審議時間は衆議院でわずか30時間,参議院では17時間50分に過ぎなかった。
かかる状況において,衆議院及び参議院で同法案の採決が強行され,とりわけ参議院においては,「中間報告」(国会法56条の3)の制度が濫用され本会議での採決が強行された点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。
当会は,国民の基本的人権を脅かす共謀罪法案が,国会での十分な審議も経ないまま成立を強行され,施行されたことに強く抗議し,今後も同法の改廃を求めていく。 また,成立した共謀罪法は,その要件の不明確さゆえに市民の基本的人権を不当に侵害し,もしくは市民が基本的人権を行使する上で重大な萎縮効果をもたらしうる。当会は,基本的人権が不当に侵害されることのないよう,日本弁護士連合会,市民団体等と連帯し,市民の基本的人権を擁護し,これが不当に侵害される場合には,当会と所属会員はその擁護のために全力をあげる決意であることを表明する。あわせて,市民各位に対し,同法によって萎縮することなく,これまで以上に,自由に考え,議論し,意見表明を行い続けることを呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月17日
福井弁護士会 会長 川 村 一 司
去る2017年(平成29年)6月15日,共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)が国会で可決・成立し,同法は同年7月11日に施行された。
同法案に対しては,国内外からさまざまな問題点が指摘され,当会も複数回にわたり反対の見解を表明した(2016年(平成28年)11月25日付け及び2017年(平成29年)3月22日付け当会会長声明)。国連プライバシーに関する権利の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も,首相宛書簡の中で「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との強い懸念を表明した。 また,様々な指摘にもかかわらず,同法案の本質的問題は修正されなかった。準備行為に着手した時点で処罰するとされるが,その「準備行為」の内容は依然として曖昧であり,実質的には共謀内容に着目することになる。このように,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,既遂処罰を原則とし,その前段階の未遂や予備等は例外的に処罰する刑法の基本原則を否定するという問題は解消されなかった。依然としてテロと無関係な犯罪まで多数が処罰対象となっており,また,処罰対象となる「組織的犯罪集団」の要件も曖昧であった。政府は,こうした問題点の指摘に対し,国会でも変遷し不明確さの残る答弁しかできず,国連の特別報告者からの質問にも,実質的に回答することはなかった。277もの多数の罪を対象とし,国民の基本的人権に重大な影響を与える法案にもかかわらず,審議時間は衆議院でわずか30時間,参議院では17時間50分に過ぎなかった。
かかる状況において,衆議院及び参議院で同法案の採決が強行され,とりわけ参議院においては,「中間報告」(国会法56条の3)の制度が濫用され本会議での採決が強行された点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。
当会は,国民の基本的人権を脅かす共謀罪法案が,国会での十分な審議も経ないまま成立を強行され,施行されたことに強く抗議し,今後も同法の改廃を求めていく。 また,成立した共謀罪法は,その要件の不明確さゆえに市民の基本的人権を不当に侵害し,もしくは市民が基本的人権を行使する上で重大な萎縮効果をもたらしうる。当会は,基本的人権が不当に侵害されることのないよう,日本弁護士連合会,市民団体等と連帯し,市民の基本的人権を擁護し,これが不当に侵害される場合には,当会と所属会員はその擁護のために全力をあげる決意であることを表明する。あわせて,市民各位に対し,同法によって萎縮することなく,これまで以上に,自由に考え,議論し,意見表明を行い続けることを呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月17日
福井弁護士会 会長 川 村 一 司
いわゆる「共謀罪法案」の成立に反対する会長声明ー皆さんもいつの間にか捜査や処罰の対象になる世の中に!それでよいのでしょうか?
マンション建設反対の会で座り込みをしようと会員同士がSNSで相談し合い,その後お花見のためにシートを買ったAさん
宗教団体に入信したところ,団体のメーリングリストで「役所に放火しろ」と幹部から指示を受け,メーリングリスト内では下見に行った等やりとりがかわされていたが怖くて返信していないBさん このたび政府は,2017年(平成29年)3月21日,犯罪を計画段階で処罰する共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)を閣議決定し,本通常国会に提出した。
当会は,昨年11月25日にも,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威になるばかりか,刑法の基本原則を否定するものであるとして,いわゆる共謀罪法案の国会への提出に強く反対する会長声明を出してきた。
共謀罪法案は,①テロ対策を目的としていること②対象犯罪を277に減少させたこと等の点で,従来の共謀罪法案とは異なっていると政府は主張している。
しかし,そもそも法案の目的(第1条)にテロ文言がないばかりか,テロリズムの定義規定もなく,当初の政府原案にはなかった「テロリズム集団その他」がその後になって主体に付加された経過からして,真にテロ対策を目的としているとはうかがえない。また,テロ対策とは関連性のない犯罪(組織的な詐欺,覚せい剤譲渡,詐欺破産等)も多数対象犯罪とされていること等からすれば,従来の共謀罪法案の有する法的な問題点は何ら解消されていないものと評価できる。また,この間の国会審議を踏まえると,冒頭に記載した事例における,お花見のためにシートを買っただけのAさん,メーリングリストでのやりとりに返信しなかっただけのBさんのように,自分の知らない間に捜査対象となり,一般市民や市民団体が処罰の対象とされる可能性が否定できないことも明らかになってきた。
よって,当会は,国民の基本的人権を擁護する立場から,「共謀罪法案」の国会提出に強く抗議するとともに,その成立に強く反対するものである。
2017年(平成29年) 3月 22日
福井弁護士会 会長 海 道 宏 実
憲法に緊急事態条項を創設することに反対する会長声明―災害対策を口実にするな
未曾有の被害をもたらした東日本大震災の後、政府・自民党においては、災害対策を理由として、憲法を改正し緊急事態条項を創設しようとする動きがあり、憲法審査会でも議論が行われている。
この緊急事態条項は、大規模な自然災害、外部からの武力攻撃その他法律が定める緊急事態において、内閣総理大臣が閣議にかけ緊急事態の宣言を発することにより、内閣が法律と同一の効力を持つ政令を制定できること、内閣総理大臣が財政上必要な支出その他の処分を行うこと及び地方自治体の長に対して必要な指示ができること等を内容としている(自民党改憲草案第98条・第99条参照)。これは、いわば行政に立法権を付与して国民主権・議会制民主主義・権力分立という憲法秩序を停止するもので、政府への権力の集中と強化をもたらし、その結果、権力の濫用により国民の自由や権利が不当に奪われる危険性が高い。
一方、大規模災害時において最も重要なことは、刻々と変化する被災現場の状況に応じて臨機応変に対応することができる被災自治体の権限を強化することであり、政府に権限集中を図ることではない。東日本大震災の被災自治体に対する日弁連アンケート(2015年9月実施・24市町村回答)でも、大多数の自治体が災害対策の第一義的な権限は市町村主導にすべきと回答した。また一つを除き全自治体が憲法に緊急事態条項を導入する必要はない旨回答したとの結果が示されている。また、日本の災害法制では、大規模災害時の対処のために既に十分な整備がなされている。すなわち、内閣総理大臣は、災害緊急事態を布告し、生活必需物資等の授受の制限、価格統制等を決定できるほか、必要に応じて地方公共団体等にも指示をすることができる。今後の大規模災害への備えとして行うべきは、こうした災害法制を前提に、平時から防災・減災のための対策・準備を充実させることにほかならない。
武力攻撃やテロ行為が発生した場合等においても、事態対処法その他の法律により内閣総理大臣長とする対策本部を設置し内閣総理大臣に権限を集中させる等の対処の方法が既に規定されており、憲法に緊急事態条項を創設する必要性はない。むしろ、現行規定が過剰に内閣総理大臣に権限を集中させていないかの検証こそ必要である。ワイマール憲法下において独裁政権を許した例や大日本帝国憲法における緊急勅令等の例を挙げるまでもなく、緊急事態条項は、国家権力を担う者により濫用されてきた歴史がある。日本国憲法が、このような歴史を踏まえた憲法制定議会での議論を経て、敢えて緊急事態条項を設けなかった趣旨を今一度想起すべきである。
以上のことから、当会は、憲法に緊急事態条項を創設することについて、災害対策としてはまったく必要がないばかりかむしろ有害であり、立憲主義の根幹を変容させ、その濫用により国民の自由や権利を不当に奪われるおそれがあることから、これに強く反対するものである。
2016年(平成28年)11月25日
福井弁護士会 会長 海 道 宏 実
大津地裁による高浜原発運転差止・仮処分決定に対する会長声明
3月9日、大津地方裁判所は、関西電力高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という)3、4号機の運転を禁止する仮処分決定(以下「本決定」という)を発令した。これを受け、関西電力も、停止中の高浜原発4号機に加え、3号機についても運転停止の手続に入った。2015年4月14日に福井地方裁判所が同原発の運転を差し止める仮処分決定を出したときは、高浜原発は運転を停止していたので、史上初めて、司法判断により、運転中の原発が停止したことになる。
周知のとおり福島原発事故は、人命の喪失を含む、きわめて広範かつ深刻な被害を現在も与え続けている。同様の事態を二度と引き起こしてはならないことは、あまりにも自明である。原発等に対する今日の司法審査は、同事故の教訓を踏まえ、万が一にも同様の事故を起こしてはならないという観点からなされるべきものである。
本決定は、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政に大幅な改変が加えられた後の事案であることを直視し、電力会社において、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政がどのように変化し、その結果、高浜原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され、電力会社がこの要請にどのように応えたかについて、主張及び疎明を尽くすべきであるとする一方、原子力規制委員会が電力会社に対して設置許可を与えた事実のみによっては、上記主張・疎明があったとすることはできないと判断した。
それを前提として、二度と福島原発と同様の事故を発生させてはならないとの見地から安全対策を講ずるには、徹底した原因究明が必要であり、電力会社や規制委員会の姿勢が、この点に意を払わないものならば、そもそも新規制基準策定に向う姿勢に非常に不安を覚えること、基準地震動策定の前提となる式が科学的に異論のない公式と考えることはできないこと、耐震性能やその評価の前提となる基準地震動の策定方法について十分な検討がなされたとは認められないこと、津波対策や避難計画を含んだ安全確保についても疑問が残ること等の理由により、差止を認めたものである。
当会は、本決定について、あるべき司法判断の道筋を示したものとして高く評価するとともに、政府及び電力会社各社に対し、本決定の趣旨を尊重し、本決定が指摘した諸点について、確実な安全性が確保されない限り、決して原発を再稼働させないよう求めるものである。
2016年3月23日
福井弁護士会長 寺田 直樹
死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を求める会長声明
2016年(平成28年)3月25日,大阪拘置所において1名,福岡拘置所において1名の合計2名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による昨年12月に続く死刑執行である。
死刑制度は,死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること,EUを中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止していること,誤判・冤罪に基づき死刑執行がなされた場合には取り返しがつかないこと,などの様々な問題を内包している。
特に,2014年(平成26年)3月27日には,静岡地方裁判所が袴田事件について再審を開始し,死刑および拘置の執行を停止する決定をしたところであり,誤った死刑判決に基づく執行の危険性は依然として残されたままである。
さらに,2014年(平成26年)2月には,裁判員経験者から,法務省に宛てて死刑執行停止の要望書が提出されており,また,同年11月の内閣府世論調査において,「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの,そのうち40.5%は「将来的には,死刑を廃止してもよい」と回答していること,「仮釈放のない終身刑が導入されるならば」という前提の質問に対する回答において,「死刑を廃止する方がよい」37.7%,「死刑を廃止しない方がよい」51.5%との比率となっていることからも,死刑制度の存廃について議論する必要性があると言える。
日本弁護士連合会が, 2011年(平成23年)年10月7日,第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択したこと等を踏まえ,当会も,2012年(平成24年),会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,2013年(平成25年)7日には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。そして,当会としても,2016年(平成28年)1月21日付け,2015年(平成27年)7月1日付け等の会長声明において,十分な全社会的議論が尽くされることなく死刑が執行されていることに強く抗議するとともに,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を行う必要性を繰り返し表明してきたところである。
また,昨年度からは,中部弁護士会連合会内にも死刑問題検討ワーキンググループが設置されたことから,中部地方の各弁護士会とも連携して,より幅広く死刑制度の存廃について全社会的議論を行うための取り組みも進めているところである。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開がなされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑執行だけがさらに繰り返されていることは,到底容認できない。
このような実情を踏まえ,当会は,これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが,今回もまた全社会的議論がなされないなか,死刑が執行されたことに強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を求めるものである。
2016年(平成28年)4月22日
福井弁護士会 会長 海 道 宏 実
安全保障関連法の施行に強く抗議するとともにその廃止を求める会長声明
2016年(平成28年)3月29日,平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下「安全保障関連法」という。)が施行された。
安全保障関連法は,大多数の憲法学者,元内閣法制局長官ら,さらには元最高裁長官を含む最高裁判所裁判官経験者までもが,憲法違反であると指摘し,日本弁護士連合会及び全国全ての弁護士会が廃案を求め,多くの国民が反対する中で,採決が強行され成立した法律である。当会も,2015年(平成27年)5月25日付け,同年7月23日付け及び同年9月28日付け各会長声明において,憲法違反の同法に反対の態度を繰り返し表明してきた。
安全保障関連法は,「存立危機事態」なる抽象的で不明確な要件の下に,歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し,わが国が攻撃されていないにもかかわらず自衛隊が海外で他国と共に武力を行使することを可能にした。加えて,外国軍隊の武力行使との一体化に当たるとして禁じてきた範囲にまで「後方支援」を拡大し,国連平和維持活動(PKO)に従事している自衛隊に駆け付け警護等の新たな任務と任務遂行のための武器使用権限を付与した。
このように,安全保障関連法の内容は明らかに日本国憲法第9条に違反しており,同法により,日本国憲法が国家権力に課した最も重要な制約である「戦争放棄」が事実上骨抜きにされるに至っていることは,立憲主義を損なう重大な暴挙といわざるを得ない。
また,安全保障関連法は,手続的にも,内容が多岐にわたり憲法上の問題点も多い法案を,国会提出後わずか4か月という短期間で強行採決を重ねて成立させた点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。法案成立後,安倍内閣総理大臣は「政府としてこれからも国民に丁寧に説明する努力を続けていきたい」と記者会見で述べたが,その後も国民に対し十分な説明はなされていないばかりか,2016年(平成28年)2月に民主党などの野党5党(当時)が共同提出した安全保障関連法廃止法案の今国会での審議入りを与党が拒否するなど,安全保障関連法への疑問に耳を傾けない政府与党の対応には,「国民に丁寧に説明する」姿勢はいささかも感じられない。
折しも日本国憲法制定70周年にあたる今年,日本国憲法にとってかかる重大な危機が進行し,立憲主義が損なわれていることに対しては,深い憂慮を表明せざるを得ない。
よって,当会は,安全保障関連法が施行されたことに強く抗議するとともに,その廃止を強く求めるものである。
2016年(平成28年)4月20日
福井弁護士会
会長 海 道 宏 実
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2015(平成27)年12月18日,東京拘置所において1名,仙台拘置所において1名の合計2名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による初めての死刑執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは8回目で合わせて14名となる。
当会は,昨年7月にも,当面の間死刑執行を停止し,その間に死刑に関する情報を広く国民に公開し,全社会的議論を踏まえた上で死刑制度を見直すことを求めてきた。にもかかわらず,今回,さらに死刑執行が行われたことは極めて遺憾であり,改めて死刑執行に強く抗議するものである。
死刑の廃止は国際的な趨勢である。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国の3か国のみであるが,韓国は18年近く死刑の執行を停止しており事実上の死刑廃止国と評価されており,米国は19州が死刑を廃止している。こうした状況を受け,国際人権(自由権)規約委員会は,昨年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
また,米国では,死刑事件については,スーパーデュープロセスとして,9審制や,必要的上訴制など,我が国と比べて手厚い手続保障があり,また,弁護費用や量刑資料等の調査にかかる費用等についても財政的手当がなされている。このことを鑑みると,我が国は,十分な手続保障と量刑資料の元であれば本来死刑になるべきではない者でも死刑となってしまう,いわゆる量刑誤判の危険性が高いという問題を抱えているといえる。このように死刑制度がある国の中でも,我が国は手続保障の薄い国なのである。
そして,死刑は,一旦執行されてしまえば取り返しがつかない刑罰である。2014(平成26)年3月,いわゆる袴田事件の再審開始決定がなされ,死刑および拘置の執行が停止されたが,もし袴田氏に対し死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田事件は,えん罪の恐ろしさはもちろんのこと,この死刑制度の最大ともいえる問題点を浮き彫りにしている。
今回,死刑執行がなされた者のうちの1名は,裁判員裁判により死刑判決を受け,その後一旦は控訴したもののこれを取り下げたため死刑判決が確定した,という事案である。必要的上訴制の下であればさらに審理が行われていたわけであり,国際的な水準からして手続保障に問題があるというべき事案といえる。
また,もう1名についても,控訴審から事実関係を争った事案であることから,やはり手続保障に疑問が残る事案と言える。
2014(平成26)年11月に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果,「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの,そのうち40.5%は「将来的には,死刑を廃止してもよい」とした。また仮釈放のない終身刑が導入されるならば,「死刑を廃止する方がよい」37.7%,「死刑は廃止しない方がよい」51.5%と回答している。この世論調査の結果も,死刑廃止についての全社会的議論の必要性を示している。
日本弁護士連合会が,死刑のない社会が望ましいことを見据えて,2011(平成23)年10月7日,第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択したこと等を踏まえ,当会も,2012(平成24)年,会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,2013(平成25)年7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。今年度からは,中部弁護士連合会内にも死刑問題検討ワーキンググループが設置され,中部地方の各弁護士会とも連携して,より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを進めている。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開がなされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑執行だけがさらに繰り返されていることは,到底容認できない。
当会は,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を踏まえたうえで,その抜本的な検討及び見直しを重ねて求めるものである。
2016年(平成28年)1月21日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、これまで、日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられており、先日、賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
国会議員からの賛同の声は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生に対する経済的支援の必要性について、理解が得られつつあるものと考えられる。
司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会的基盤である。司法修習生は、かかる公共的価値を実現する司法制度を担う法曹になる者たちであるから、本来、国が公費をもって養成するべきである。このような理念のもとに、我が国では、終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかし、2011年11月から、修習期間中に費用が必要な修習生に対しては、修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。司法修習生のなかには、大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている修習生も多く、これに修習資金の負債も加わることで、その合計額が極めて多額に上る者も少なくない事態となっている。法曹を目指す者は、年々減少の一途をたどっているが、こうした重い経済的負担が法曹志望者激減の一因となっていることが指摘されているところである。
このような事態を重く受け止め、法曹に広く有為の人材を募り、法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないようにするべきである。そして、司法修習生が経済的不安を抱えることなく修習に専念できる環境を整えるため、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
昨年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携、協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省、最高裁判所等の関係各機関は、法曹に広く有為の人材を募り、これらの人材が安心し希望をもって法曹を目指せる制度とするという観点から、司法修習生に対する経済的支援の実現について、直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
当会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて、国会に対し、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
2016年(平成28年)1月20日
福井弁護士会 会長 寺田 直樹
安全保障法制改定法案の成立に抗議する会長声明
1 2015年9月19日,参議院本会議において,平和安全法制整備法案及び国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)が可決成立した。
2 当会はこれまで,2014年7月1日付け閣議決定及び本法案について,政府が憲法第9条の解釈を変更し,法律によって集団的自衛権の行使を容認することは,憲法の立憲主義の基本理念及び恒久平和主義の基本原理に違反することを,繰り返し指摘してきた。また,後方支援の拡大や武器使用の拡大等の立法も,自衛隊が海外での武力行使に至る危険性を高めるものとして,同様に憲法に違反することを指摘してきた。
3 本法案の違憲性を指摘する声は,国内に大きく広がった。
日本弁護士連合会及び全国全ての弁護士会が本法案の違憲性を指摘し反対を表明したばかりではなく,衆議院憲法審査会における3名の参考人(与党推薦を含む)をはじめとする多くの憲法学者,歴代の内閣法制局長官,さらには元最高裁判所長官を含む最高裁判所判事経験者が,本法案の違憲性を指摘するに至った。
4 本法案については,国会の審議において重大な問題点が指摘されており,議論が尽くされたとは,到底いい難い。
例えば,具体的にどのような場合に集団的自衛権の行使が必要か,集団的自衛権行使の要件となる「存立危機事態」とは具体的にいかなる場合かについて,政府は「総合的に判断する」との答弁を繰り返すばかりで,少なくとも集団的自衛権の必要性に関しては十分な立法事実すら示すことができなかった。
5 安倍首相自身が認めるとおり,本法案に対する国民の支持は広まっていない。
各種世論調査の結果によれば,法案への反対は賛成を大幅に上回り,今国会での成立に反対する意見は,ほとんどの世論調査で過半数を大きく超えている。
6 このように,違憲の法案を,十分審議を尽くすことなく,しかも多数の国民の反対を無視して,衆参両院で強行採決を繰り返して成立させたことは,立憲民主主義を蹂躙する暴挙というほかなく,わが国の憲政史上に重大な汚点を残すものであって,当会は強くこれに抗議する。
7 憲法は,「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。」(第98条第1項)と定めている。したがって,本法案は成立しても,その憲法違反の内容は無効といわざるを得ない。
当会は,憲法と立憲民主主義を守り,戦後70年にわたるわが国の平和国家としてのゆるぎない姿勢を堅持すべく,2014年7月1日付け閣議決定の撤回を求めるとともに,今後も多くの市民とともに,改正された各法律及び国際平和支援法の適用・運用に反対し,さらにはその廃止・改正に向けた取組を行う決意である。
2015年(平成27年)9月28日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹
少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明
2015(平成27)年6月17日,選挙権年齢を18歳以上に引き下げる「公職選挙法等の一部を改正する法律案」が,参議院本会議において可決され成立した。
成年年齢引き下げについては,他の法律にも影響を与える事項であり,現に,この法律案には,「民法,少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」との附則がある。
昨今,少年事件が凶悪化している,少年法が十分に機能していない等の意見がみられ,政府与党内などにおいて,少年法の適用年齢も現行の20歳未満から18歳未満に引き下げようとする議論がなされている。
しかし,法律は,それぞれ立法趣旨が異なるのであり,すべての法律でその適用年齢を一律に考える必然性はない。
公職選挙法は,衆議院議員,参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し,その選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われることを確保し,もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする法律である。他方,少年法は,少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする法律である。
このように,公職選挙法と少年法は,それぞれ立法趣旨が異なるのであって,それぞれ立法趣旨に沿った適用年齢が設定されるべきである。上記附則は,選挙犯罪との関係での調整を図る規定と解するべきであり,少年法の適用年齢を引き下げる根拠となるものではない。
また,少年事件が凶悪化しているとの意見は,何ら根拠のない意見と言わざるを得ない。
我が国における少年非行件数について,刑法犯少年の検挙人員は,1980(昭和55)年代前半の約20万人をピークとして減少傾向にある。特に,2004(平成16)年以降は11年連続で減少して,2014(平成26)年には5万人を割っている。また,殺人,強盗,放火,強姦等といった重大犯罪についても,昭和30年代半ばには約8000人が検挙されていたのに対し,2014(平成26)年には,703人にまで減少している。殺人事件(未遂等も含む。)に限定してみても,昭和40年代頃までは,200件を超えていたが,その後,減少し,近年は多い年でも年間20件前後に留まっている。
このような客観的なデータに鑑みれば,刑法少年の検挙人員および少年による重大事件数は減少しているのであり,少年法の適用年齢を引き下げることを基礎づける立法事実は存在しない。
また,少年法が十分に機能していないとの意見も何ら根拠のない意見である。
少年法のもと,非行を犯したと考えられる少年は,全件,家庭裁判所に送致され,少年の成育歴や資質に踏み込んだ調査が行われる。その過程で,少年に内省を深めさせ,非行の背景にある環境を調整し,再度非行を犯すことがないように働きかけが行われている。保護観察および少年院においても,同様の働きかけが行われ,少年の立ち直りに成果を上げている。
仮に,一律に適用年齢を引き下げるとすれば,成年と同様の刑事手続に付されることになる。成人の刑事事件においては,多くの事件が起訴猶予や略式手続に付され,少年事件において行われているような調査や環境調整などは行われない。そうなれば,少年の立ち直りの機会が損なわれ,再犯リスクを高めることになる。
また,現行少年法においても,一定の重大事件については,成人と同じ刑事裁判手続に付すことが可能なのであって,少年法の機能の面からみても,適用年齢を引き下げる必要性は乏しい。
少年法の適用年齢の引き下げの議論にあたっては,各法律の立法趣旨や制度の検討をすることなく単純に連動させるべきではなく,個別の事件にのみ着目して十分な根拠ないままに議論をするのではなく,各法律の立法趣旨や制度について充分に検討し,客観的なデータにもとづく慎重な議論を行うべきである。
以上の通りであるから,当会は,拙速な少年法の適用年齢引き下げに反対するものである。
2015(平成27)年7月24日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹
秘密保護法の施行に反対し同法の改廃を求める会長声明
政府は,2014(平成26)年10月14日,特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の運用基準を閣議決定し,来たる同年12月10日に同法が施行されようとしている。
同法は,国民の知る権利を侵害し,国民主権原理の根幹を脅かし,罪刑法定主義にも抵触し,秘密に関与する関係者のプライバシーを侵害するなど,日本国憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な欠陥をもつものである。当会は,再三にわたる意見書や会長声明の中で,その問題点を強く訴え,日本弁護士連合会も,同様の立場から同法に強く反対してきた。
同法は,国民からも,国際社会からも強い批判をあびている。情報保全諮問会議が本年7月に作成した同法施行令(素案)及び運用基準(素案)等について同年7月24日から実施されたパブリックコメントでも,2万3820件もの多数の意見が寄せられたが,その多くが同法に対する深刻な懸念を表明するものだったと報じられている。また,国連人権(自由権)規約委員会は、同年7月31日,日本政府に対して,秘密指定には厳格な定義が必要であることやジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰の対象から除外されるべきことなどを勧告した。
こうした国内外からの強い批判にもかかわらず,秘密保護法は,その施行令や運用基準を総合しても,当会等が指摘してきた問題点を解消することなく施行されようとしている。秘密指定できる情報はきわめて広範であり恣意的な秘密指定の危険性は依然として存在するし,完全に独立した第三者機関や公益通報者保護制度といった恣意的運用を防止する仕組みもきわめて不充分である。秘密漏えいの罪に関する刑事裁判における被告人の手続保障も十分とはいえず,適性評価制度による評価対象者やその家族等のプライバシー侵害の危険も解消されていない。
したがって,当会は,国民の知る権利や国民主権等の日本国憲法の基本原理を脅かす同法の施行に強く反対し,政府に対し,改めて,同法の廃止又は抜本的な見直しを行うよう強く求める。
2014(平成26)年12月1日
福井弁護士会 会 長 内 上 和 博
ttp://fukuben.or.jp/
会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement
会長 川村 一司
2017年08月31日
死刑制度の廃止を含む刑罰制度の見直しに着手しないまま死刑執行を続けることについて抗議する会長声明
2017年08月18日
いわゆる共謀罪法の制定・施行に抗議する会長声明?自由に考え,議論し,意見表明を行い続けられる社会のために?
2017年08月08日
地方消費者行政の一層の強化を求める会長声明
会長 海 道 宏 実
2017年03月23日
いわゆる「共謀罪法案」の成立に反対する会長声明ー皆さんもいつの間にか捜査や処罰の対象になる世の中に!それでよいのでしょうか?
2016年12月22日
政府に労働時間規制強化により長時間労働を早急に是正することを求める会長声明
2016年11月25日
いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明―市民の自由が脅かされ,いつの間にか処罰されてしまう世の中にしないために
2016年11月25日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止に向けた検討をすべきであることを求める会長声明―犯罪被害者遺族支援とともに刑罰制度の見直しを2016年11月25日
憲法に緊急事態条項を創設することに反対する会長声明―災害対策を口実にするな
2016年04月22日
死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を求める会長声明
2016年04月20日
安全保障関連法の施行に強く抗議するとともにその廃止を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/2
会長 寺田 直樹
2016年03月23日
大津地裁による高浜原発運転差止・仮処分決定に対する会長声明
2016年01月21日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2016年01月20日
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
2015年12月28日
高浜原発3,4号機及び大飯原発3,4号機差止仮処分福井地裁決定に対する会長声明
2015年09月28日
安全保障法制改定法案の成立に抗議する会長声明
2015年07月24日
少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明
2015年07月23日
安全保障関連法案の衆議院強行採決に抗議し,同法案の撤回・廃案を強く求める会長声明
2015年07月01日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2015年05月25日
安全保障法制改定法案に反対する会長声明
2015年04月30日
放送の自由の確保を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/3
2015年04月14日
高浜原発3,4号機差止仮処分福井地裁決定に対する会長声明
2015年04月06日
労働時間規制を緩和する「労働基準法等の一部を改正する法律案」の閣議決定に反対する会長声明
会長 内 上 和 博
2015年03月27日
中池見湿地のラムサール条約登録範囲に悪影響を与えないよう北陸新幹線ルートの再検討を求める会長声明
2015年01月29日
商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明
2015年01月19日
内閣府消費者委員会の消費者庁移管について慎重な審議を 求める会長声明
2014年12月18日
福井事件再審請求最高裁決定に対する会長声明
2014年12月01日
秘密保護法の施行に反対し同法の改廃を求める会長声明
2014年09月30日
死刑執行に抗議する会長声明
2014年07月04日
集団的自衛権行使容認の閣議決定に強く抗議する会長声明
2014年05月21日
大飯原発3,4号機差止訴訟福井地裁判決に対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/4
2014年04月30日
商品先物取引法下における不招請勧誘禁止緩和に反対する会長声明
2014年04月30日
集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
2014年04月30日
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する 法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
会長 島 田 広
2014年03月14日
過労死等防止基本法の成立を求める会長声明
2013年12月18日
商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明
2013年12月18日
死刑執行に関する会長声明
2013年12月18日
秘密保護法の採決強行に抗議し,同法の改廃を求める会長声明
2013年12月11日
行政書士法改正に反対する会長声明
2013年12月04日
衆議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明
2013年11月29日
生活保護法改正案の廃案と国民の生活保護受給権の実効的保障を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/5
2013年11月27日
特定秘密保護法案の国際原則に照らした徹底審議と廃案を求める会長声明
2013年11月27日
通信傍受の安易な拡大と会話傍受の導入に反対する会長声明
2013年11月05日
国民の知る権利を侵害する特定秘密保護法案の廃案を求める会長声明
2013年10月31日
憲法第96条の発議要件緩和に反対する会長声明
2013年10月31日
福島第一原発事故に関し,損害賠償請求権を実質化するための立法措置及び,健康被害を未然に防ぐための措置を求める会長声明
2013年09月30日
死刑執行に関する会長声明
2013年08月01日
個人保証の原則的な廃止等を求める会長声明
2013年06月12日
「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
会 長 和 田 晋 一
2013年03月06日
「福井女子中学生殺人事件」再審棄却決定に関する会長声明
2012年07月25日
秘密保全法制定に反対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/6
2012年07月18日
大飯原発の再稼働が行われたことに抗議するとともに,停止中の原発につき再稼働しないことを求める会長声明
2012年07月02日
貸金業法完全施行2周年を迎えての会長声明
会長 安 藤 健
2011年12月22日
福井県警察警察官による逮捕状請求書偽造行為に対する会長声明
2011年11月30日
「福井女子中学生殺人事件」再審開始決定に関する福井弁護士会会長声明
2011年04月28日
「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明
会長 井 上 毅
2011年03月24日
提携リース契約を規制する法律の制定を求める会長声明
2010年11月25日
秋田弁護士会所属会員の殺害事件に対する会長声明
2010年06月25日
司法修習生に対する給費制の存続を求める会長声明
2010年05月31日
全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
会 長 黛 千 恵 子
2010年03月29日
家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/7
2010年01月29日
取調べの可視化(全過程の録画)の早期実現を求める会長声明
2009年12月24日
葛飾ビラ配布事件最高裁判決に関する会長声明
2009年10月30日
改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明
2009年08月27日
消費者庁長官及び消費者委員会委員の選任手続に関し 両組織創設の趣旨の徹底を求める会長声明
2009年07月27日
生活保護「母子加算」制度の法定を求める会長声明
会長 朝 日 宏 明
2009年03月11日
取調べの可視化(全過程の録音・録画)の実現を求める会長声明
2008年09月17日
死刑執行に関する会長声明
2008年06月11日
死刑執行に関する会長声明
2008年05月30日
「犯罪被害者等による少年審判の傍聴」を内容とする少年法改正法案に対する会長声明
会長 北 川 稔
2008年02月13日
死刑執行に関する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/8
2007年04月27日
「憲法改正国民投票法案」の慎重審議を求める声明
会長 山川 均
2006年11月30日
教育基本法改正法案に反対する再度の会長声明
2006年06月02日
教育基本法改正法案に反対する会長声明
2006年04月28日
「弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)」に反対する会長声明
2006年04月25日
共謀罪新設に反対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/arguments
意見書
会 長 島 田 広
2013年09月17日
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書
会 長 和 田 晋 一
2012年07月25日
公契約法・公契約条例の制定を求める意見書
会 長 安 藤 健
2011年09月09日
地方消費者行政の充実強化に対する国の支援のあり方に関する意見書
会 長 北 川 稔
2007年10月03日
割賦販売法改正についての意見書
会 長 山 川 均
2006年11月14日
割賦販売法の抜本的改正を求める意見書
ttp://fukuben.or.jp/statement/resolution
決議
会 長 和 田 晋 一
2012年11月29日
生活保護基準の引き下げに強く反対する総会決議
会長 安藤 健
2012年02月22日
全面的国選付添人制度の実現を求める総会決議
会長 井上 毅
2010年12月27日
各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
―――――•―――――•―――――
放送の自由の確保を求める会長声明
1 自由民主党情報通信戦略調査会は,2015年4月17日,日本放送協会(NHK)の報道番組におけるやらせ報道問題及びテレビ朝日の報道番組においてコメンテーターが「官邸からバッシングを受けてきた」旨発言した問題について,両放送事業者の幹部を呼んで事情聴取を行った。同調査会(旧電気通信調査会)は同党の放送・通信分野の政策を担当する部局であり,報道によれば,同調査会の川崎二郎会長は,調査終了後,記者団に対して,放送倫理・番組向上機構(BPO)によるチェックが不充分なら,新たな第三者機関を設ける制度改正を行う可能性があることを示唆する発言をしたとされている。
政府と密接な関係にあり,今後の政府の放送政策に重大な影響を与える与党の調査会が,個々の番組の内容に関して放送事業者の幹部を呼んで事情聴取をすることは,放送事業者に対する事実上の圧力にほかならず,憲法及び放送法に照らしてきわめて不当な行為であると言わざるを得ない。
2 いうまでもなく,放送事業者には放送の自由がある。放送の自由は,日本国憲法第21条によって保障されており,国民の知る権利に奉仕するものとして民主主義の健全な機能を確保する上でもっとも重要な基盤となる憲法上の基本的人権である。
放送法は,第二次世界大戦中に放送が政府や軍部のプロパガンダの道具とされた歴史に対する真摯な反省にたちつつ1,かかる憲法上の重要な意義を有する放送の自由を確保すべく,その目的において「放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を確保すること」(第1条第2号)を掲げ,さらに「放送番組は,法律に定める権限に基づく場合でなければ,何人からも干渉され,又は規律されることがない。」(第3条)と規定し,番組編集の自由を保障している。番組内容に誤り等がある場合にも,放送事業者の「自律」を尊重しつつ是正が図られるよう,放送事業者自身に調査・訂正等の義務を課すほか(第9条),放送番組審議機関の制度を設けており(第6条,第7条),放送番組が外部からの圧力によってゆがめられることのないよう,慎重に配慮している。
3 こうした放送の自由の重要な意義及びこれを確保するための放送法の諸規定の趣旨に鑑みれば,政府が個々の放送番組の内容に干渉することが許されないのはもとより2,政党が政策調査を行う際にも,個々の番組内容に対する干渉にわたらないようにすべき制約があるといえる(なお政党が,事実と異なる報道により権利を害された場合には,放送法第9条に基づき訂正放送の請求をすればよいのであって,放送事業者の関係者から事情聴取を行う必要はない。)。
4 今回の自由民主党による事情聴取は,こうした制約を全く無視し,個々の番組の内容を狙い撃ちにして調査を行うものであり,放送番組の内容への干渉に外ならず,きわめて不当である。特に,政府と密接な関係を有する与党によってかかる干渉がなされることは,放送事業者の放送の自由を著しく脅かす行為といえる。
当会は,基本的人権の尊重と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として,民主主義の根幹をなす国民の知る権利と放送事業者の放送の自由を脅かすこうした行為を,看過することはできない。
5 よって,当会は,自由民主党はもとより,他の政党に対しても,個々の番組内容を狙い撃ちにした調査等,放送事業者の放送の自由を脅かす行為を行わないよう求め,放送事業者に対しては,そうした圧力に屈することなく自らの放送の自由を守ることを求める。
1 同法制定時の衆議院本会議において,当時衆議院電気通信委員会委員長であった辻寛一は,第3条に関する説明の中で,次のように述べて,放送の自由の重要性を強調している。「放送は,それが強力な宣伝の具であるがゆえに,一層表現の自由を確保されなければなりません。かつてわが国において,軍閥,官僚が放送をその手中に握って国民に対する虚妄なる宣伝の手段に使ったやり方は、将来断じてこれを再演せしむべきではありません。」
2 なお,放送法第3条の2のいわゆる番組編成準則については,かつては政府もこれを「精神的規定」と説明し,その実施は放送事業者の自律に待つべきものと説明していた。1993年9月のいわゆる椿発言問題以来,同条を理由とする放送内容に関する行政指導が繰り返されているが,この行政実務のあり方自体,憲法学説上,違憲の疑いが強いとして批判されている。
2015年(平成27年)4月30日
福井弁護士会 長 寺 田 直 樹
死刑制度の廃止を含む刑罰制度の見直しに着手しないまま死刑執行を続けることについて抗議する会長声明
2017年(平成29年)7月13日,2名に対し,大阪拘置所および広島拘置所においてそれぞれ死刑が執行された。金田勝年法務大臣による2度目の執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは11回目で,合わせて19名になる。
死刑制度は,死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること,EUを中心とする世界の約7割の国々が死刑を廃止又は停止していること,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないこと,などの様々な問題を内包していることは,2016年(平成28年)11月25日付け当会会長声明などにおいて繰り返し指摘してきたとおりである。そして,日本弁護士連合会は,2016年(平成28年)10月7日,我が福井県で開催された第59回人権擁護大会において,これまでよりさらに踏み込んで,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。その宣言においては,犯罪被害者・遺族に対する十分な配慮と支援が不可欠であるとしつつも,他方で,生まれながらの犯罪者はおらず,犯罪者となってしまった人の多くは家庭,経済,教育,地域等における様々な環境や差別が一因となって犯罪に至っているという実態があることを踏まえると,人権を尊重する民主主義社会であろうとする我々の社会においては,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体を見直す必要があるとして,直ちに公の議論を始めるよう求めている。
当会においても,2013年(平成25年)7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催し,また,2015年度(平成27年度)に設置された中部弁護士会連合会内の死刑問題検討ワーキンググループにおいても,昨年度は死刑廃止を考えるシンポジウムを富山,愛知,石川の各地で合計3回開催するなど,福井のみならず中部地方の各弁護士会を挙げて,より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを進めてきている。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開が十分になされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑の執行が繰り返されていることは,到底容認できない。当会は,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の見直しに着手しないまま行われた今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑制度についてのさらなる全社会的議論を呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月31日
福井弁護士会 会長 川村 一司
いわゆる共謀罪法の制定・施行に抗議する会長声明?自由に考え,議論し,意見表明を行い続けられる社会のために?
去る2017年(平成29年)6月15日,共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)が国会で可決・成立し,同法は同年7月11日に施行された。
同法案に対しては,国内外からさまざまな問題点が指摘され,当会も複数回にわたり反対の見解を表明した(2016年(平成28年)11月25日付け及び2017年(平成29年)3月22日付け当会会長声明)。国連プライバシーに関する権利の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も,首相宛書簡の中で「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との強い懸念を表明した。
また,様々な指摘にもかかわらず,同法案の本質的問題は修正されなかった。準備行為に着手した時点で処罰するとされるが,その「準備行為」の内容は依然として曖昧であり,実質的には共謀内容に着目することになる。このように,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,既遂処罰を原則とし,その前段階の未遂や予備等は例外的に処罰する刑法の基本原則を否定するという問題は解消されなかった。依然としてテロと無関係な犯罪まで多数が処罰対象となっており,また,処罰対象となる「組織的犯罪集団」の要件も曖昧であった。政府は,こうした問題点の指摘に対し,国会でも変遷し不明確さの残る答弁しかできず,国連の特別報告者からの質問にも,実質的に回答することはなかった。277もの多数の罪を対象とし,国民の基本的人権に重大な影響を与える法案にもかかわらず,審議時間は衆議院でわずか30時間,参議院では17時間50分に過ぎなかった。
かかる状況において,衆議院及び参議院で同法案の採決が強行され,とりわけ参議院においては,「中間報告」(国会法56条の3)の制度が濫用され本会議での採決が強行された点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。
当会は,国民の基本的人権を脅かす共謀罪法案が,国会での十分な審議も経ないまま成立を強行され,施行されたことに強く抗議し,今後も同法の改廃を求めていく。 また,成立した共謀罪法は,その要件の不明確さゆえに市民の基本的人権を不当に侵害し,もしくは市民が基本的人権を行使する上で重大な萎縮効果をもたらしうる。当会は,基本的人権が不当に侵害されることのないよう,日本弁護士連合会,市民団体等と連帯し,市民の基本的人権を擁護し,これが不当に侵害される場合には,当会と所属会員はその擁護のために全力をあげる決意であることを表明する。あわせて,市民各位に対し,同法によって萎縮することなく,これまで以上に,自由に考え,議論し,意見表明を行い続けることを呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月17日
福井弁護士会 会長 川 村 一 司
去る2017年(平成29年)6月15日,共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)が国会で可決・成立し,同法は同年7月11日に施行された。
同法案に対しては,国内外からさまざまな問題点が指摘され,当会も複数回にわたり反対の見解を表明した(2016年(平成28年)11月25日付け及び2017年(平成29年)3月22日付け当会会長声明)。国連プライバシーに関する権利の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も,首相宛書簡の中で「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との強い懸念を表明した。 また,様々な指摘にもかかわらず,同法案の本質的問題は修正されなかった。準備行為に着手した時点で処罰するとされるが,その「準備行為」の内容は依然として曖昧であり,実質的には共謀内容に着目することになる。このように,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,既遂処罰を原則とし,その前段階の未遂や予備等は例外的に処罰する刑法の基本原則を否定するという問題は解消されなかった。依然としてテロと無関係な犯罪まで多数が処罰対象となっており,また,処罰対象となる「組織的犯罪集団」の要件も曖昧であった。政府は,こうした問題点の指摘に対し,国会でも変遷し不明確さの残る答弁しかできず,国連の特別報告者からの質問にも,実質的に回答することはなかった。277もの多数の罪を対象とし,国民の基本的人権に重大な影響を与える法案にもかかわらず,審議時間は衆議院でわずか30時間,参議院では17時間50分に過ぎなかった。
かかる状況において,衆議院及び参議院で同法案の採決が強行され,とりわけ参議院においては,「中間報告」(国会法56条の3)の制度が濫用され本会議での採決が強行された点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。
当会は,国民の基本的人権を脅かす共謀罪法案が,国会での十分な審議も経ないまま成立を強行され,施行されたことに強く抗議し,今後も同法の改廃を求めていく。 また,成立した共謀罪法は,その要件の不明確さゆえに市民の基本的人権を不当に侵害し,もしくは市民が基本的人権を行使する上で重大な萎縮効果をもたらしうる。当会は,基本的人権が不当に侵害されることのないよう,日本弁護士連合会,市民団体等と連帯し,市民の基本的人権を擁護し,これが不当に侵害される場合には,当会と所属会員はその擁護のために全力をあげる決意であることを表明する。あわせて,市民各位に対し,同法によって萎縮することなく,これまで以上に,自由に考え,議論し,意見表明を行い続けることを呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月17日
福井弁護士会 会長 川 村 一 司
いわゆる「共謀罪法案」の成立に反対する会長声明ー皆さんもいつの間にか捜査や処罰の対象になる世の中に!それでよいのでしょうか?
マンション建設反対の会で座り込みをしようと会員同士がSNSで相談し合い,その後お花見のためにシートを買ったAさん
宗教団体に入信したところ,団体のメーリングリストで「役所に放火しろ」と幹部から指示を受け,メーリングリスト内では下見に行った等やりとりがかわされていたが怖くて返信していないBさん このたび政府は,2017年(平成29年)3月21日,犯罪を計画段階で処罰する共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)を閣議決定し,本通常国会に提出した。
当会は,昨年11月25日にも,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威になるばかりか,刑法の基本原則を否定するものであるとして,いわゆる共謀罪法案の国会への提出に強く反対する会長声明を出してきた。
共謀罪法案は,①テロ対策を目的としていること②対象犯罪を277に減少させたこと等の点で,従来の共謀罪法案とは異なっていると政府は主張している。
しかし,そもそも法案の目的(第1条)にテロ文言がないばかりか,テロリズムの定義規定もなく,当初の政府原案にはなかった「テロリズム集団その他」がその後になって主体に付加された経過からして,真にテロ対策を目的としているとはうかがえない。また,テロ対策とは関連性のない犯罪(組織的な詐欺,覚せい剤譲渡,詐欺破産等)も多数対象犯罪とされていること等からすれば,従来の共謀罪法案の有する法的な問題点は何ら解消されていないものと評価できる。また,この間の国会審議を踏まえると,冒頭に記載した事例における,お花見のためにシートを買っただけのAさん,メーリングリストでのやりとりに返信しなかっただけのBさんのように,自分の知らない間に捜査対象となり,一般市民や市民団体が処罰の対象とされる可能性が否定できないことも明らかになってきた。
よって,当会は,国民の基本的人権を擁護する立場から,「共謀罪法案」の国会提出に強く抗議するとともに,その成立に強く反対するものである。
2017年(平成29年) 3月 22日
福井弁護士会 会長 海 道 宏 実
憲法に緊急事態条項を創設することに反対する会長声明―災害対策を口実にするな
未曾有の被害をもたらした東日本大震災の後、政府・自民党においては、災害対策を理由として、憲法を改正し緊急事態条項を創設しようとする動きがあり、憲法審査会でも議論が行われている。
この緊急事態条項は、大規模な自然災害、外部からの武力攻撃その他法律が定める緊急事態において、内閣総理大臣が閣議にかけ緊急事態の宣言を発することにより、内閣が法律と同一の効力を持つ政令を制定できること、内閣総理大臣が財政上必要な支出その他の処分を行うこと及び地方自治体の長に対して必要な指示ができること等を内容としている(自民党改憲草案第98条・第99条参照)。これは、いわば行政に立法権を付与して国民主権・議会制民主主義・権力分立という憲法秩序を停止するもので、政府への権力の集中と強化をもたらし、その結果、権力の濫用により国民の自由や権利が不当に奪われる危険性が高い。
一方、大規模災害時において最も重要なことは、刻々と変化する被災現場の状況に応じて臨機応変に対応することができる被災自治体の権限を強化することであり、政府に権限集中を図ることではない。東日本大震災の被災自治体に対する日弁連アンケート(2015年9月実施・24市町村回答)でも、大多数の自治体が災害対策の第一義的な権限は市町村主導にすべきと回答した。また一つを除き全自治体が憲法に緊急事態条項を導入する必要はない旨回答したとの結果が示されている。また、日本の災害法制では、大規模災害時の対処のために既に十分な整備がなされている。すなわち、内閣総理大臣は、災害緊急事態を布告し、生活必需物資等の授受の制限、価格統制等を決定できるほか、必要に応じて地方公共団体等にも指示をすることができる。今後の大規模災害への備えとして行うべきは、こうした災害法制を前提に、平時から防災・減災のための対策・準備を充実させることにほかならない。
武力攻撃やテロ行為が発生した場合等においても、事態対処法その他の法律により内閣総理大臣長とする対策本部を設置し内閣総理大臣に権限を集中させる等の対処の方法が既に規定されており、憲法に緊急事態条項を創設する必要性はない。むしろ、現行規定が過剰に内閣総理大臣に権限を集中させていないかの検証こそ必要である。ワイマール憲法下において独裁政権を許した例や大日本帝国憲法における緊急勅令等の例を挙げるまでもなく、緊急事態条項は、国家権力を担う者により濫用されてきた歴史がある。日本国憲法が、このような歴史を踏まえた憲法制定議会での議論を経て、敢えて緊急事態条項を設けなかった趣旨を今一度想起すべきである。
以上のことから、当会は、憲法に緊急事態条項を創設することについて、災害対策としてはまったく必要がないばかりかむしろ有害であり、立憲主義の根幹を変容させ、その濫用により国民の自由や権利を不当に奪われるおそれがあることから、これに強く反対するものである。
2016年(平成28年)11月25日
福井弁護士会 会長 海 道 宏 実
大津地裁による高浜原発運転差止・仮処分決定に対する会長声明
3月9日、大津地方裁判所は、関西電力高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という)3、4号機の運転を禁止する仮処分決定(以下「本決定」という)を発令した。これを受け、関西電力も、停止中の高浜原発4号機に加え、3号機についても運転停止の手続に入った。2015年4月14日に福井地方裁判所が同原発の運転を差し止める仮処分決定を出したときは、高浜原発は運転を停止していたので、史上初めて、司法判断により、運転中の原発が停止したことになる。
周知のとおり福島原発事故は、人命の喪失を含む、きわめて広範かつ深刻な被害を現在も与え続けている。同様の事態を二度と引き起こしてはならないことは、あまりにも自明である。原発等に対する今日の司法審査は、同事故の教訓を踏まえ、万が一にも同様の事故を起こしてはならないという観点からなされるべきものである。
本決定は、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政に大幅な改変が加えられた後の事案であることを直視し、電力会社において、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政がどのように変化し、その結果、高浜原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され、電力会社がこの要請にどのように応えたかについて、主張及び疎明を尽くすべきであるとする一方、原子力規制委員会が電力会社に対して設置許可を与えた事実のみによっては、上記主張・疎明があったとすることはできないと判断した。
それを前提として、二度と福島原発と同様の事故を発生させてはならないとの見地から安全対策を講ずるには、徹底した原因究明が必要であり、電力会社や規制委員会の姿勢が、この点に意を払わないものならば、そもそも新規制基準策定に向う姿勢に非常に不安を覚えること、基準地震動策定の前提となる式が科学的に異論のない公式と考えることはできないこと、耐震性能やその評価の前提となる基準地震動の策定方法について十分な検討がなされたとは認められないこと、津波対策や避難計画を含んだ安全確保についても疑問が残ること等の理由により、差止を認めたものである。
当会は、本決定について、あるべき司法判断の道筋を示したものとして高く評価するとともに、政府及び電力会社各社に対し、本決定の趣旨を尊重し、本決定が指摘した諸点について、確実な安全性が確保されない限り、決して原発を再稼働させないよう求めるものである。
2016年3月23日
福井弁護士会長 寺田 直樹
死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を求める会長声明
2016年(平成28年)3月25日,大阪拘置所において1名,福岡拘置所において1名の合計2名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による昨年12月に続く死刑執行である。
死刑制度は,死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること,EUを中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止していること,誤判・冤罪に基づき死刑執行がなされた場合には取り返しがつかないこと,などの様々な問題を内包している。
特に,2014年(平成26年)3月27日には,静岡地方裁判所が袴田事件について再審を開始し,死刑および拘置の執行を停止する決定をしたところであり,誤った死刑判決に基づく執行の危険性は依然として残されたままである。
さらに,2014年(平成26年)2月には,裁判員経験者から,法務省に宛てて死刑執行停止の要望書が提出されており,また,同年11月の内閣府世論調査において,「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの,そのうち40.5%は「将来的には,死刑を廃止してもよい」と回答していること,「仮釈放のない終身刑が導入されるならば」という前提の質問に対する回答において,「死刑を廃止する方がよい」37.7%,「死刑を廃止しない方がよい」51.5%との比率となっていることからも,死刑制度の存廃について議論する必要性があると言える。
日本弁護士連合会が, 2011年(平成23年)年10月7日,第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択したこと等を踏まえ,当会も,2012年(平成24年),会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,2013年(平成25年)7日には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。そして,当会としても,2016年(平成28年)1月21日付け,2015年(平成27年)7月1日付け等の会長声明において,十分な全社会的議論が尽くされることなく死刑が執行されていることに強く抗議するとともに,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を行う必要性を繰り返し表明してきたところである。
また,昨年度からは,中部弁護士会連合会内にも死刑問題検討ワーキンググループが設置されたことから,中部地方の各弁護士会とも連携して,より幅広く死刑制度の存廃について全社会的議論を行うための取り組みも進めているところである。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開がなされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑執行だけがさらに繰り返されていることは,到底容認できない。
このような実情を踏まえ,当会は,これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが,今回もまた全社会的議論がなされないなか,死刑が執行されたことに強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を求めるものである。
2016年(平成28年)4月22日
福井弁護士会 会長 海 道 宏 実
安全保障関連法の施行に強く抗議するとともにその廃止を求める会長声明
2016年(平成28年)3月29日,平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下「安全保障関連法」という。)が施行された。
安全保障関連法は,大多数の憲法学者,元内閣法制局長官ら,さらには元最高裁長官を含む最高裁判所裁判官経験者までもが,憲法違反であると指摘し,日本弁護士連合会及び全国全ての弁護士会が廃案を求め,多くの国民が反対する中で,採決が強行され成立した法律である。当会も,2015年(平成27年)5月25日付け,同年7月23日付け及び同年9月28日付け各会長声明において,憲法違反の同法に反対の態度を繰り返し表明してきた。
安全保障関連法は,「存立危機事態」なる抽象的で不明確な要件の下に,歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し,わが国が攻撃されていないにもかかわらず自衛隊が海外で他国と共に武力を行使することを可能にした。加えて,外国軍隊の武力行使との一体化に当たるとして禁じてきた範囲にまで「後方支援」を拡大し,国連平和維持活動(PKO)に従事している自衛隊に駆け付け警護等の新たな任務と任務遂行のための武器使用権限を付与した。
このように,安全保障関連法の内容は明らかに日本国憲法第9条に違反しており,同法により,日本国憲法が国家権力に課した最も重要な制約である「戦争放棄」が事実上骨抜きにされるに至っていることは,立憲主義を損なう重大な暴挙といわざるを得ない。
また,安全保障関連法は,手続的にも,内容が多岐にわたり憲法上の問題点も多い法案を,国会提出後わずか4か月という短期間で強行採決を重ねて成立させた点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。法案成立後,安倍内閣総理大臣は「政府としてこれからも国民に丁寧に説明する努力を続けていきたい」と記者会見で述べたが,その後も国民に対し十分な説明はなされていないばかりか,2016年(平成28年)2月に民主党などの野党5党(当時)が共同提出した安全保障関連法廃止法案の今国会での審議入りを与党が拒否するなど,安全保障関連法への疑問に耳を傾けない政府与党の対応には,「国民に丁寧に説明する」姿勢はいささかも感じられない。
折しも日本国憲法制定70周年にあたる今年,日本国憲法にとってかかる重大な危機が進行し,立憲主義が損なわれていることに対しては,深い憂慮を表明せざるを得ない。
よって,当会は,安全保障関連法が施行されたことに強く抗議するとともに,その廃止を強く求めるものである。
2016年(平成28年)4月20日
福井弁護士会
会長 海 道 宏 実
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2015(平成27)年12月18日,東京拘置所において1名,仙台拘置所において1名の合計2名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による初めての死刑執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは8回目で合わせて14名となる。
当会は,昨年7月にも,当面の間死刑執行を停止し,その間に死刑に関する情報を広く国民に公開し,全社会的議論を踏まえた上で死刑制度を見直すことを求めてきた。にもかかわらず,今回,さらに死刑執行が行われたことは極めて遺憾であり,改めて死刑執行に強く抗議するものである。
死刑の廃止は国際的な趨勢である。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国の3か国のみであるが,韓国は18年近く死刑の執行を停止しており事実上の死刑廃止国と評価されており,米国は19州が死刑を廃止している。こうした状況を受け,国際人権(自由権)規約委員会は,昨年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
また,米国では,死刑事件については,スーパーデュープロセスとして,9審制や,必要的上訴制など,我が国と比べて手厚い手続保障があり,また,弁護費用や量刑資料等の調査にかかる費用等についても財政的手当がなされている。このことを鑑みると,我が国は,十分な手続保障と量刑資料の元であれば本来死刑になるべきではない者でも死刑となってしまう,いわゆる量刑誤判の危険性が高いという問題を抱えているといえる。このように死刑制度がある国の中でも,我が国は手続保障の薄い国なのである。
そして,死刑は,一旦執行されてしまえば取り返しがつかない刑罰である。2014(平成26)年3月,いわゆる袴田事件の再審開始決定がなされ,死刑および拘置の執行が停止されたが,もし袴田氏に対し死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田事件は,えん罪の恐ろしさはもちろんのこと,この死刑制度の最大ともいえる問題点を浮き彫りにしている。
今回,死刑執行がなされた者のうちの1名は,裁判員裁判により死刑判決を受け,その後一旦は控訴したもののこれを取り下げたため死刑判決が確定した,という事案である。必要的上訴制の下であればさらに審理が行われていたわけであり,国際的な水準からして手続保障に問題があるというべき事案といえる。
また,もう1名についても,控訴審から事実関係を争った事案であることから,やはり手続保障に疑問が残る事案と言える。
2014(平成26)年11月に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果,「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの,そのうち40.5%は「将来的には,死刑を廃止してもよい」とした。また仮釈放のない終身刑が導入されるならば,「死刑を廃止する方がよい」37.7%,「死刑は廃止しない方がよい」51.5%と回答している。この世論調査の結果も,死刑廃止についての全社会的議論の必要性を示している。
日本弁護士連合会が,死刑のない社会が望ましいことを見据えて,2011(平成23)年10月7日,第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択したこと等を踏まえ,当会も,2012(平成24)年,会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,2013(平成25)年7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。今年度からは,中部弁護士連合会内にも死刑問題検討ワーキンググループが設置され,中部地方の各弁護士会とも連携して,より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを進めている。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開がなされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑執行だけがさらに繰り返されていることは,到底容認できない。
当会は,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を踏まえたうえで,その抜本的な検討及び見直しを重ねて求めるものである。
2016年(平成28年)1月21日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、これまで、日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられており、先日、賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
国会議員からの賛同の声は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生に対する経済的支援の必要性について、理解が得られつつあるものと考えられる。
司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会的基盤である。司法修習生は、かかる公共的価値を実現する司法制度を担う法曹になる者たちであるから、本来、国が公費をもって養成するべきである。このような理念のもとに、我が国では、終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかし、2011年11月から、修習期間中に費用が必要な修習生に対しては、修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。司法修習生のなかには、大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている修習生も多く、これに修習資金の負債も加わることで、その合計額が極めて多額に上る者も少なくない事態となっている。法曹を目指す者は、年々減少の一途をたどっているが、こうした重い経済的負担が法曹志望者激減の一因となっていることが指摘されているところである。
このような事態を重く受け止め、法曹に広く有為の人材を募り、法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないようにするべきである。そして、司法修習生が経済的不安を抱えることなく修習に専念できる環境を整えるため、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
昨年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携、協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省、最高裁判所等の関係各機関は、法曹に広く有為の人材を募り、これらの人材が安心し希望をもって法曹を目指せる制度とするという観点から、司法修習生に対する経済的支援の実現について、直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
当会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて、国会に対し、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
2016年(平成28年)1月20日
福井弁護士会 会長 寺田 直樹
安全保障法制改定法案の成立に抗議する会長声明
1 2015年9月19日,参議院本会議において,平和安全法制整備法案及び国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)が可決成立した。
2 当会はこれまで,2014年7月1日付け閣議決定及び本法案について,政府が憲法第9条の解釈を変更し,法律によって集団的自衛権の行使を容認することは,憲法の立憲主義の基本理念及び恒久平和主義の基本原理に違反することを,繰り返し指摘してきた。また,後方支援の拡大や武器使用の拡大等の立法も,自衛隊が海外での武力行使に至る危険性を高めるものとして,同様に憲法に違反することを指摘してきた。
3 本法案の違憲性を指摘する声は,国内に大きく広がった。
日本弁護士連合会及び全国全ての弁護士会が本法案の違憲性を指摘し反対を表明したばかりではなく,衆議院憲法審査会における3名の参考人(与党推薦を含む)をはじめとする多くの憲法学者,歴代の内閣法制局長官,さらには元最高裁判所長官を含む最高裁判所判事経験者が,本法案の違憲性を指摘するに至った。
4 本法案については,国会の審議において重大な問題点が指摘されており,議論が尽くされたとは,到底いい難い。
例えば,具体的にどのような場合に集団的自衛権の行使が必要か,集団的自衛権行使の要件となる「存立危機事態」とは具体的にいかなる場合かについて,政府は「総合的に判断する」との答弁を繰り返すばかりで,少なくとも集団的自衛権の必要性に関しては十分な立法事実すら示すことができなかった。
5 安倍首相自身が認めるとおり,本法案に対する国民の支持は広まっていない。
各種世論調査の結果によれば,法案への反対は賛成を大幅に上回り,今国会での成立に反対する意見は,ほとんどの世論調査で過半数を大きく超えている。
6 このように,違憲の法案を,十分審議を尽くすことなく,しかも多数の国民の反対を無視して,衆参両院で強行採決を繰り返して成立させたことは,立憲民主主義を蹂躙する暴挙というほかなく,わが国の憲政史上に重大な汚点を残すものであって,当会は強くこれに抗議する。
7 憲法は,「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。」(第98条第1項)と定めている。したがって,本法案は成立しても,その憲法違反の内容は無効といわざるを得ない。
当会は,憲法と立憲民主主義を守り,戦後70年にわたるわが国の平和国家としてのゆるぎない姿勢を堅持すべく,2014年7月1日付け閣議決定の撤回を求めるとともに,今後も多くの市民とともに,改正された各法律及び国際平和支援法の適用・運用に反対し,さらにはその廃止・改正に向けた取組を行う決意である。
2015年(平成27年)9月28日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹
少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明
2015(平成27)年6月17日,選挙権年齢を18歳以上に引き下げる「公職選挙法等の一部を改正する法律案」が,参議院本会議において可決され成立した。
成年年齢引き下げについては,他の法律にも影響を与える事項であり,現に,この法律案には,「民法,少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」との附則がある。
昨今,少年事件が凶悪化している,少年法が十分に機能していない等の意見がみられ,政府与党内などにおいて,少年法の適用年齢も現行の20歳未満から18歳未満に引き下げようとする議論がなされている。
しかし,法律は,それぞれ立法趣旨が異なるのであり,すべての法律でその適用年齢を一律に考える必然性はない。
公職選挙法は,衆議院議員,参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し,その選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われることを確保し,もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする法律である。他方,少年法は,少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする法律である。
このように,公職選挙法と少年法は,それぞれ立法趣旨が異なるのであって,それぞれ立法趣旨に沿った適用年齢が設定されるべきである。上記附則は,選挙犯罪との関係での調整を図る規定と解するべきであり,少年法の適用年齢を引き下げる根拠となるものではない。
また,少年事件が凶悪化しているとの意見は,何ら根拠のない意見と言わざるを得ない。
我が国における少年非行件数について,刑法犯少年の検挙人員は,1980(昭和55)年代前半の約20万人をピークとして減少傾向にある。特に,2004(平成16)年以降は11年連続で減少して,2014(平成26)年には5万人を割っている。また,殺人,強盗,放火,強姦等といった重大犯罪についても,昭和30年代半ばには約8000人が検挙されていたのに対し,2014(平成26)年には,703人にまで減少している。殺人事件(未遂等も含む。)に限定してみても,昭和40年代頃までは,200件を超えていたが,その後,減少し,近年は多い年でも年間20件前後に留まっている。
このような客観的なデータに鑑みれば,刑法少年の検挙人員および少年による重大事件数は減少しているのであり,少年法の適用年齢を引き下げることを基礎づける立法事実は存在しない。
また,少年法が十分に機能していないとの意見も何ら根拠のない意見である。
少年法のもと,非行を犯したと考えられる少年は,全件,家庭裁判所に送致され,少年の成育歴や資質に踏み込んだ調査が行われる。その過程で,少年に内省を深めさせ,非行の背景にある環境を調整し,再度非行を犯すことがないように働きかけが行われている。保護観察および少年院においても,同様の働きかけが行われ,少年の立ち直りに成果を上げている。
仮に,一律に適用年齢を引き下げるとすれば,成年と同様の刑事手続に付されることになる。成人の刑事事件においては,多くの事件が起訴猶予や略式手続に付され,少年事件において行われているような調査や環境調整などは行われない。そうなれば,少年の立ち直りの機会が損なわれ,再犯リスクを高めることになる。
また,現行少年法においても,一定の重大事件については,成人と同じ刑事裁判手続に付すことが可能なのであって,少年法の機能の面からみても,適用年齢を引き下げる必要性は乏しい。
少年法の適用年齢の引き下げの議論にあたっては,各法律の立法趣旨や制度の検討をすることなく単純に連動させるべきではなく,個別の事件にのみ着目して十分な根拠ないままに議論をするのではなく,各法律の立法趣旨や制度について充分に検討し,客観的なデータにもとづく慎重な議論を行うべきである。
以上の通りであるから,当会は,拙速な少年法の適用年齢引き下げに反対するものである。
2015(平成27)年7月24日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹
秘密保護法の施行に反対し同法の改廃を求める会長声明
政府は,2014(平成26)年10月14日,特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の運用基準を閣議決定し,来たる同年12月10日に同法が施行されようとしている。
同法は,国民の知る権利を侵害し,国民主権原理の根幹を脅かし,罪刑法定主義にも抵触し,秘密に関与する関係者のプライバシーを侵害するなど,日本国憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な欠陥をもつものである。当会は,再三にわたる意見書や会長声明の中で,その問題点を強く訴え,日本弁護士連合会も,同様の立場から同法に強く反対してきた。
同法は,国民からも,国際社会からも強い批判をあびている。情報保全諮問会議が本年7月に作成した同法施行令(素案)及び運用基準(素案)等について同年7月24日から実施されたパブリックコメントでも,2万3820件もの多数の意見が寄せられたが,その多くが同法に対する深刻な懸念を表明するものだったと報じられている。また,国連人権(自由権)規約委員会は、同年7月31日,日本政府に対して,秘密指定には厳格な定義が必要であることやジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰の対象から除外されるべきことなどを勧告した。
こうした国内外からの強い批判にもかかわらず,秘密保護法は,その施行令や運用基準を総合しても,当会等が指摘してきた問題点を解消することなく施行されようとしている。秘密指定できる情報はきわめて広範であり恣意的な秘密指定の危険性は依然として存在するし,完全に独立した第三者機関や公益通報者保護制度といった恣意的運用を防止する仕組みもきわめて不充分である。秘密漏えいの罪に関する刑事裁判における被告人の手続保障も十分とはいえず,適性評価制度による評価対象者やその家族等のプライバシー侵害の危険も解消されていない。
したがって,当会は,国民の知る権利や国民主権等の日本国憲法の基本原理を脅かす同法の施行に強く反対し,政府に対し,改めて,同法の廃止又は抜本的な見直しを行うよう強く求める。
2014(平成26)年12月1日
福井弁護士会 会 長 内 上 和 博